ギシッ……とソファーが軋む。

何を思ったのか伸ばされる手は私の頬へと触れようとしているようで。

眞紘本人を見ても何の表情を浮かべることなく、ただつかみ所のない顔を貫いていて。




………何が、したいのか。

まるで分からないそれを、私も同じような顔でただ見ていただけだった。




交わる視線。

伸ばされる手。



───指が、耳…そして首筋へと伝って。

───また上がっては耳朶を何度か触る。

───後頭部に回し、勢いよく引きつける…、



それは……やはり、同じ事があったような、気がした。

靡く黒髪。甘いホワイトムスクの香り。

変わらずに温度のない瞳達が交じり合う。



────互いに目を、開けていた。






角度をつけて近づけられた顔。

柔らかい唇の感触。



「……なんだ。つまんな」



"それ"を離せば、変わらずに真顔を決め込む私を覗き込み、飄々とした顔でそんな事を言ってくる。