「莉央」
何を考えてるのか。
眞紘は未だに雑誌へと視線を向けている私のことを呼ぶ。
高くもなく低くも無い中性的な声で、それに視線だって途切れることなく何故か私へと向けられて。
「────こっち、向いて」
それはどっかで聞いたような台詞だった。
……どっかで。
そう思いながらも引き寄せられたように私は眞紘の方へと顔を向けてしまった。
パサリと一束、黒髪が耳元から落ちる。
見ればそこには変わらずに何を考えてるのか分からない瞳があって、絶えず此方へとそれを向けてくる。
妙な、空気。
「なに、」
「…さぁね」
「さぁねって…」
「……」
疑問を投げかけても的確な答えなど返ってはこない。
独特な雰囲気に呑まれるような感覚が私を襲った。