馬鹿みたいに静かな空間。
ただ眞紘は何を考えているのか分からない瞳を向けてくる。
────考えれば一階で女を巻いたらしい眞紘がここに来るだなんて予想は簡単にできたはずなのに、なんて失態。
会話なんて丸聞こえだったはず。
いや…そもそも寝ていたのかもしれないけど。
「いた」
「……あ、そう…」
らしくない。
落ちてきた黒髪を耳にかけて視線の定まりを見せない私は、直接眞紘を見ることができなかった。
いや、マジでやらかした。
寧ろ相手が何の興味を持っていないような眞紘で良かったと言うべきなのだろうか。
「……」
「……」
眞紘は、まだ見てくる。
時計の針の音すらしない空間で、何ともつかみ所がない男と、私が。
何をするわけでもなく、
ただ────見つめて、
……ギシッ。
何を思ったのか眞紘は立ち上がって此方に向かって歩いてくる。