「…───…で、……だったの!」

「ふぅん…、それで?」




変わらずに伏し目がちな瞳で。

回してくる腕を拒否することもなく女の話を聞いている眞紘に、ついに女は我慢できないような熱のこもった視線を向け出した。





「それで……、って、ねぇねぇ、それよりも……さ?」



トン……と、背伸びをして。

より胸元を寄せて強調させる女は、囁くような言葉を眞紘にふっかける。



「キス、しよーよ」



寄せに寄せられた胸を押し当てて、色仕掛けを見せる女に眞紘はただ涼しげな瞳を向けたまま。

長い前髪から覗く透き通った瞳に、女はジリジリと近寄ってゆく。

……する、のか……とここまで見てしまった私は最後の結末まで知らなくてはならないような義務感が生まれて。




「…また、今度ね」




眞紘はやんわりと断った。

人差し指を使って女の唇を封じると、飄々とした足取りで何処かへと去っていってしまう。

女は顔を赤くしたままボーッと立ち尽くしていた。



今度は……するのかしないのか。

それすらも定かではない眞紘は────やはりミステリアスな男だ。