「リト・キリノだ。………私はあなたを認めたわけではない。ハーフフェアリという異端で汚らわしい存在のおまえがラファエル様にふさわしいと思うわけがない。あなたを助けるつもりはないが、ラファエル様のご指示で追放しないだけだという事を心に留めていて欲しい」
 「リト………。それ以上彼女を傷つけるような事を言ったら、おまえであっても許さない。シュリに謝罪をしろ」
 「お断りします。記憶のある異世界人というのならば、大切にしたいところですが、婚約などしたら王家の血が汚れます。ラファエル様も何を血迷っていらっしゃるのか。理解できません」
 「もういい、さがれ。俺がお前を斬りつける前に、今日は俺とシュリの前に現れるな。処分は明日受けさせる」


 ラファエルは強い口調でそう言い捨てた。リトよりも視線は厳しい。
 彼は、朱栞の全身をジロリと見つめた後、ラファエルの頭を下げて部屋を出ていこうとした。


 「……異世界人はこの国で役立つから連れてこられます。その方は、このシャレブレにどんな知恵と恵みを与えてくださるのでしょうね。楽しみにしています」


 後ろ姿のまま、視線だけを朱栞に向けたリトはそう言うと、髪と同じだが少し明るい黄緑色の瞳を光らせながら、リトは部屋から退出した。

 残されたのは、怒りの表情のラファエルと、ハッとした表情の朱栞、そしてオロオロするメイナ。

 リトの態度がこの城の人間の考えを表しているのだろう。彼が気持ちを伝えてくれたおかげで、自分がどんな風に思われているのか、よくわかった。

 「シュリ、申し訳ない。リトはいい奴なんだが、如何せん態度と目付きが悪い。驚かせてしまったね」
 「いえ……きっとリトさんが話してくれた事が周りの評価なのだとわかっていますから」
 「君はこの世界に来たばかりなんだ。それなのに言葉はほぼ完璧で、妖精に転生してしまったから飛行も覚えなくてはならなくなった。魔法だって、魔力が大きいから苦戦しているだけだ。まだ半月ほどしか経っていないのに、何の役に立つのかなんて考えなくてもいいんだ。それに、シュリには俺の隣に居てくれるだけで嬉しいと思っているよ」
 「………ありがとうございます。けれど、私も何が出来るのか考えてみたい、と思います。ただ城の中で過ごすのは私には合っていないと思いますので」