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 「契約までこぎつけたら、すぐにいなくなるなんて。やっぱり利用しようとしてたんだわ」


 書庫室から戻ってきた朱栞はそう声を荒げて、ベットの上にゴロンと横になった。
 それも、すべてはラファエルの行いのせいだった。

 2つの契約の話を終えた後、ラファエルは「ごめん。急用が出来たみたいだ」と、言って朱栞との時間を終わらせたのだ。1日空けていると言っていたのは嘘だったのだろうか。
 彼は、とても申し訳なさそうな顔をしていたが、朱栞にはどうしても信じられなかった。

 本来ならば、精人語や魔法や飛び方などを教えてもらうはずだった。朱栞は早くに言葉を覚えてこの国の人たちと話をしたかったので、その時を楽しみにしていた。が、それも叶わなくなった。けれど、ラファエルは人精語の文字の一覧表と、スペイン語での読み方を書いた紙をくれたのだ。見るからに子ども用の絵本と共に。


 「仕方がないから、やれるところまで自分で勉強しないと」


 ゆっくりと体を起こし、ラファエルが書いてくれた紙と絵本をベットに並べて、一人勉強をする事にした。妖精の体のままだと、本をめくるのにも一苦労だ。
 苦戦を強いられている時だった。


 コンコンッ