「………シュリ?」
「あ、ラファエル!よかった、目を覚まして。今、お医者様を……」
「いいよ。すぐに知らせると騒がしくなる。少しだけ2人でいよう。昨日の夜は別々に寝たんだろ?今だけは2人で」
「わかった」
慌てて出ていこうとした朱栞を止め、そう言ったラファエルはいつものように優しい口調だったけれど、どこか疲れているようだ。怪我をしたのだ、大分体力を使ったのだろう。
朱栞は寝ているラファエルの枕元にふわりと降りると、そのまま座って彼の顔を覗いた。
「大丈夫なの?……とても心配したわ」
「心配かけて、ごめん。本当に悪かったと思ってる。ちょっとした油断があったよ。俺の悪い癖」
「………ラファエル。ラファエルは何をしているの?王子なのに、こんな怪我をするなんて。これは魔法による怪我でしょ?これって………」
「大丈夫だよ。心配しなくていいんだ。俺は必ず君の元へ帰ってくるから」
あぁ、やはり彼は優しすぎる。
それ故に心配になる。
「どうして……何も教えてくれないの?私が、異世界人でこの世界に来たばかりだから?」
「シュリ……?」
ラファエルは、ゆっくりと体を起こす。まだ本調子ではない体で無理をしているのかもしれない。けれど、朱栞のあふれでる気持ちはもう止められなかった。
自分勝手なのもわかる。
けれど、どうしても我慢が出来なかった。
「私、教えて貰ったの。妖精の密売の事も、それをラファエルは追っていたんでしょ?そして、それは私のためだって。穂純さんが関係しているからなんだよね?」
「ど、どうしてそれを………」
「私の大切な人がそんな事に関わっているから、伝えられなかったんだよね。だけど、私は伝えてほしかった」
「そうか、ごめん……。傷つけると思っていたんだ」
「ラファエルはそういう事を心配してくれる人だってわかってるけど、やっぱり寂しいよ。私の知らないところであなたが傷つくのは、嫌だ」
「わかった。朱栞の気持ち、考えてあげられなかった俺の責任だ。許して欲しい」