小さく言った言葉が消える。
ただの自己満足な言葉。
絶対聞こえないと高を括った言葉。
でも…想うだけなら。言うだけならきっと──────、
「………今…なんて言ったの…?」
ビクッ!
聞こえるはずない。だって、すっごく小さい声だった。自分でも聞こえるか分からないぐらいで…あ、でも心臓の音が邪魔してたから。それで思ったより声が大きかった、とか?
「ッ、え?なにも…言ってない、けど!」
それなら誤魔化さないと。
だって…私だけなんてそんなの辛い。
もし二人に気まずい態度をとられたら…どうしよう?
……あの恋愛小説だって、それが怖くて中々踏み出せてなかった。
でもあれは小説だから。
最終的に主人公達は結ばれる運命だから。
──────でも、私は?
そうなるなんて分からない。
…凄く卑怯。
だって、リヒトさんにはあんな事言って。
自分だとこんなにも勇気が出ないんだから。