両手首を掴まれ、引っ張られる。
強い力で抵抗も出来ずリヒトさんの胸の中へ。



「リ…ヒトさ、ん?」



何が何だか全く理解不能状態。

その胸板をぐっと押し返す。

…わあ、凄い筋肉。
なんて思ったのも束の間。



「貴女から触れるなとお願いしたはずですが?」

「あ゛!そうだった!」



ピタッ、と動きを止めた。
笑った声が聞こえたのはきっと気のせい。



……って!待ってよ!
そっちがするのOKで私からは駄目!?

それって理不尽過ぎない!?


でも!


嫌がる事はしたくないから我慢する!



「これからは、私だけを頼ってください。

ここだけの話ですが…私は誰よりも強いですから。危険な目に合わせる事も決してありません。寧ろ合う方が可笑しいかと思うぐらいです」



そんなの…、



「和と湊も同じだもん」

「──────は、」



あっ、また心の声が。



手を思いっきり引かれ、跨るようにリヒトさんの上に乗ってしまった。



「リヒ…うぶっ!」



頬骨を掴まれる。
痛くないぐらいの強さで。



「次にその名前を出してみてください。

…その時はその口、縫い付けてやりますので」



無表情で怖い事、サラッと言ってる…!!



「ん、ぐっ!?」

「いいですか」



リヒトさんの親指が舌の上に乗った。
…というより、入ってきた。



「私が貴女の用心棒…いえ、番犬です。
言う事は必ず聞く事。いいですね?」


「んッ…!!」



舌がぐっと押される感じに、嘔吐きかけた。




「…返事は?」

「っ、はっ………は、い」




作り笑顔で微笑まれ、指先をティッシュで拭くと手袋を付けた。