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──────真夜中。
花のベッドで体を起こしたのはリヒトだった。
その横には突っ伏して寝ている花がいた。
リヒトは自分の手首を触り脈拍を測る素振りをした。
「……落ち着いたか、」
「そのようですね」
その声は暗闇から聞こえた。眼鏡を外し、腕を組み椅子に座っている酒井秋季がいた。
「花ちゃんから聞きました。熱が出たと。……言っていなかったのですか。自分の職業を」
「……………言う必要性がないので」
「あれだけの熱が出れば、誰でも心配になるでしょう。故意の物だったとしてもです」
秋季が投げたのは小さな小瓶。
それを手に取ると、眉間にしわを寄せたリヒト。
そして、視界に映ったのは花の姿。
「今回の”毒”はかなり苦しくなると言っていたはずです。解毒効果のある液体です。水に三滴ほど垂らして薄めてから飲むように…」
「……何故、俺を置いて行った」
小さな声だった。
それでも部屋に響いたのは、真夜中で風の音も無い静かな空間だったからだろう。