──────…ビクリ、


リヒトさんが体を大きく揺らした。



…顔、赤い。


手の平じゃなく手の甲。
肌に触れるか触れないかの距離。

それでも伝わる熱。



「横になってください。あまり興奮するともっと悪化しちゃいますし」



ちなみに私は経験済み。

黙ったまま動かないリヒトさんを、横目に携帯を取り出した。


えっと。さ行…酒井、酒井…あったあった。


通話ボタンを押す瞬間、手首を握られた。



息が切れ、身体が震える気がする。



「……あの人は呼ばないでください…」



か細い声だった。
まるで怒られる前の子供みたい。



……うーん。



携帯を近くのクッションに向かってポイ。
その後でリヒトさんの首筋に手を当てた。


顎の下。出っ張った骨の下。


指を軽く当て鼓動を測る。



「やっぱり、駄目だよ。かなり熱いみたいだし、それに鼓動も早い気がするし。診てもらわないと」



私はお医者さんじゃないから。
気がする、って事しかわからないけど。

でも、熱があるのは測ったから分かるし。鼓動も何となくだけど分かる。


大変な事になる前に診てもらわないと。
後悔する事になったらどうするの?




「ッ…それは、そう…ですが……」