その先には私のベッド。
無理矢理だったし、思いっきり倒れたけど無傷なリヒトさん。
うん!いいマットレス使っててよかった!
心の中で大きなガッツポーズをした。
「い、いい加減に…」
「小言は後で聞きますね!」
束ねていた髪をゆっくり優しく解き、テキパキとリヒトさんを寝かせ、布団を掛けた。
救急セットからいつのか分からない熱さまシートを取り出す。
…うん。まだ冷たいから大丈夫!
前髪を上げ貼った。
リヒトさんは終始怪訝そうな顔をしていた。
よし…後は酒井先生に連絡して……。
「ハハ……、」
乾いた笑いが聞こえた。
サングラスを取り、前髪を掻き上げる。
「そうすれば俺に好かれるとでも?」
…リヒトさん?
ぐしゃぐしゃと髪を掻き、私の方を睨んだ。
綺麗な緑色の瞳が私の姿を映していた。
身体を起こし、顎の下に手が乗り顔を上げられた。
「女はいつもそうだ。善人ぶれば男が靡くとでも思ってるのか?
相手に…俺に組み入る為に、
弱ってる時に優しくすればいいって?
誑かして、好かれて、捨てて…その繰り返しだったんだろ?
ハハハ…流石、千夏さんの娘だな。
無意識にそんな事が出来るんだもんなぁ。
ずっと…ずっと男相手に尻尾振ってた、あの女の、」
顎の下にあるリヒトさんの手首を握った。
真っ直ぐ見つめる視線の先には見開く顔が見える。
「人の厚意を否定するのは辞めて」