「一人で行くよ!!」

「何を言っているのですか。足の怪我、まだ治っていないでしょう」

「ねぇー!降ろしてよぉー!」

「却下します」

「トイレまで付いてくるの!?」

「…好きでついて行くわけではありません」

「リヒトさんの変態ー!!」



じたばたと動く私に向かって溜息をした。その後で私にも聞こえるぐらいの舌打ち。

何故かトイレとは反対の方向へ向かうリヒトさんは、何故か会合してる二階へ向かった。そして────、



「……っっ、」

「どうしました?降ろしてと言ったのは貴女でしょう?」



二階窓の縁に私を座らせた。胸倉を掴まれ、それが離されれば私は…ここから落ちる事になる。



「さっきまでの威勢は何処へ行きました?」



出るはずなんて無い。



「そう怯えなくても大丈夫ですよ。このぐらいの高さなら…そうですね。今度は打撲ではなく、確実に折れますが」



ニコッ。




「怪我をするか、私に従うか…さあ、お好きな方をどうぞ」




サングラスが光に反射する。



────っっ、



「ご、めん…なさい…」



絞りながら言った。
リヒトさんはまたも笑みを浮かべた。

どう見ても、”笑っていない”笑顔で。



「賢明な判断です。もし、私に逆らうと言うのなら────、」



…臓器が宙に浮いたような感覚がした。
ジェットコースターに乗ってる、みたいな。



一瞬、手を離された。

上半身が窓の外へ、重力に従って落ちる────、



「おや、間違えました」

「ッ…!」



腕を引かれ、リヒトさんの胸に飛び込んだ。
心臓が驚くほど早く動いている。



ドッ、ドッ、ドッ…、



い、今…落ちる、所…で。



「次はありません」



低く小さな声がした。
顔を上げると、まだ笑顔(・・)だった。



生唾をごくんと飲み込み、無言で頷いた。