────夜。
もう真っ暗で寝る時間ぐらい。

私は非常識だと思いながら、電話を掛けていた。


気になって、
気になって…、


全く眠れる気配がしなかったからである。



コール三回目で出たのは、



『…はなぁ?こんな時間にどうしたのよ~?』



欠伸と眠そうな声の鞠だった。


「今日はお出かけしたし100%疲れてるのに、夜遅く電話かけてごめんね!でも気になる事が合って!」……と、

言うはずだった、前振りは鞠の声を聞いて完全に吹っ飛んだ。




「まりぃ!可笑しいのー!主人公と同じ事思ってるのー!」

『…はあ??』




状況を整理させて、と電話口で黙るよう指示された私は口を紡ぎ鞠の言葉を待った。



『…つまり……あの小説を見て、ヒロインと同じ思いを今してるって事でいいわね?』



電話なのに、うんうんと頷いた。
鞠の声が少しだけ高くなる。



『あらあらぁ~…それで?花はどう思ったのかしら~?』



どうって…。



「間違ってると思う!」

『…は?』



高かったはずの声がワントーン下がった気がした。


だってだって…!



「私の知ってる…のと違うの!」