留華の言う意味が、私には少し難しかった。
ただ、目の奥に感じるドロドロとした何かに、身体が震えたのを感じた。
「……返事は?」
「っっ…、」
圧に危うく頷きかけたが抑えた。
…ここで返事をすればどうなるんだろ?
何か凄く嫌な感じがする────。
その時だった、
袖に入れていた携帯が鳴ったのは。
狙ったかのようなタイミング。
慌てて取り出すと画面には”鞠”。
「…誰、」
「友達の桃園鞠ちゃん、だよ!」
「……女の子?」
頷く。
「そっか。なら出てあげないとだね」
パッと手を離した留華。
その隙に壁側から抜け出した。
振り返る事無く、パタパタと走り出した。
「────逃げてもいいよ。
捕まえればいいだけだから」
背後で小さく呟いた留華の言葉は私の耳には入らなかった。