目を瞑り、口は堅く閉じた。こじ開けようとする舌に、ぞわっとした感覚がする。
……離れた。
薄目の先には不服そうな留華がいた。
「…口、開けて?」
ニコッと笑う。
…っっ、
「私…戻らないと!今ね、パパの部屋にいるんだけど…無断で出てきちゃったから怒られ、!」
「……知ってる」
あはは、と笑って離れようとしたけど動かなかった────、気が付かなかった、いつの間にか壁際に追い詰められていたことに。
留華は見据えていた。
だから手を離してくれて…、
「る、るか。まっ…待って。さっき歯磨きしたの!ミント味だよ!スースーする!甘くな…、」
「言っただろう?
────俺は甘いのが嫌いなんだ」
……そうだった。
留華は私に合わせてくれてたんだった。
全部…嘘だった。
「口、開けて」
「…ッ、あ、あのね。留華、」
頬を掴まれ、逸らしていた視線も自然と留華に向かう。
「開けろ」
喉の奥が苦しくなった。
ヒュっと音がして、肩が震えた。
「っ、留華は…私の事嫌いなの…?」