「お嬢、ほら行くよ」
引っ張られたのは手首で、留華の力が強くて思わず「痛い」と言ってしまった。
「待てや。花が嫌がってるやないか」
「……その手を離せ」
「…こっちの台詞や」
留華の殺気。かなり怖いはずなのに、春比古くんはビクリともせず睨み返していた。
その間にいる私は別の事を考えていた。
留華が握る手首。
春比古くんが握っている手の平。
────どっちも段々と強くなっている。
「っ…、痛いよ!」
耐えられなくなって叫ぶと、驚いたのは春比古くんだった。直ぐに手を離される。
「っ!…花、ごめ、」
自分の意志じゃなく、留華の方へ向かった。
…留華だけは私の手を離してくれなかった。
「俺なら絶対に離さない。いくら痛がっていたり、嫌がっていたとしても…決して」
「っっ…なん、やと?」
「る、るか!そんなに引っ張らないで…!」
私は留華に引っ張られ、その場を後にした。