「な、なに?」


戸惑って聞くと「今の足の指の使い方、すっげー器用だなぁと思って」と、美緒の足を指差してくる。


足の指はピンッと伸ばされ、その下にはリモコンがある。


「そ、そう?」


どうして喜んでいるのかわからず、今度は手を伸ばしてリモコンを取った。


自分の部屋ではよくやるけれど、これを人前でやったのは初めてだった。


しかも、憧れの大河の前で。


だけど見た目は陽菜なので、さして恥ずかしさは感じなかった。


「よし、今日も陽菜はダラダラタイムなんだな。それじゃ俺がご飯を作るから、陽菜はダラダラしてて」


大河はそう言うと、キッチンへ向かってしまった。


美緒は唖然として大河の後ろ姿を見つめる。


手馴れた様子で野菜を切り、火をつけた鍋に入れていく。


どうやらカレーを作るつもりらしい。


美緒はおずおずと大河の後ろに立った。


「どうした? ダラダラタイムは終わりか?」


「え、う、うん……」


「なんだ? なにか言いたそうな顔だな」


大河が体ごと振り向く。


その至近距離にはまだなれることがなくてドキッとする。