美緒が着ている服は今朝着てきた私服じゃなかった。


白いフレアスカートにエメラルドグリーンのカーディガンだ。


その代わり目の間にいる女性が美緒の服を着ている。


それだけじゃない。


顔もスタイルも、まさに美緒本人なのだ。


「なにこれ!?」


廊下に美緒の悲鳴がこだまする。


「わ、わかりません。でも、その体は私のものですよね?」


「そうみたいですね。でも中身は私……」


互いに目を見交わせて深呼吸をする。


とにかく落ち着け。


階段から落ちて魂だけ入れ替わるなんて、そんなベタな話あるわけない。


これは悪い夢に決まってる。


そうだ、昨日ビールを飲みすぎたからまだ夢の中にいるんだ。


自分にそう言い聞かせて、頬をつねり上げてみる。


痛みが駆け抜けて涙がにじんだ。


「あ、あの。その体私のなんで、あんまり無茶をしないでください」


女性の止められて我に返った。


それもそうだ。


これは自分の体じゃないんだから丁寧に扱わないといけない。


女性に視線を向けると困り顔の自分と目が合ってたじろいだ。