「あっ!!」


女性が足を踏み外すのが見えた。


美緒がとっさに女性に手を伸ばす。


女性はその手を握り締めたが、落下には逆らえない。


美緒の体ごと階段を落ちていく。


紙袋の中からお弁当箱が飛び出し、階段にぶつかりながら落ちていく。


「……っ!」


3階と4階の間の踊り場まで落ちて、ようやく2人の落下は止まった。


落ちた回数は少なかったがあちこちに体をぶつけてしまい、痛みが強い。


どうにか上半身だけ起こしたとき、隣にいた女性もやっとの思いで体を起こしていた。


「え?」


相手を見て、美緒は小さく呟く。


そして徐々に目を見開いていった。


「これって、どういう……」


起き上がった女性も混乱した様子で自分の姿を見下ろして確認している。


そうやって焦っているのは紛れもなく美緒の体だったのだ。


嘘でしょ。


こんなこと、あるはずないし……。


美緒は恐る恐る自分の体を見下ろした。


その瞬間スーッと血の気が引いていくのがわかった。


一瞬して全身が冷たくなっていく。