目尻を吊り上げている芳賀さんが、震わせていた拳を振り上げた。
だめ、このままじゃ凛ちゃんが怪我しちゃう!
暴力沙汰なんて起こしたら芳賀さんだってどんな処分を食らうか分からない。

下半身にぐっと力を入れて、飛ぶように床を蹴る。
全ての元凶は私。ここは私が止めなきゃ!
じゃないと絶対後悔する。


「芳賀さん、もうやめて!」
「アンタも!」
「へ?」


制止を掛けようと背中から芳賀さんにしがみついた刹那、彼女はぐるんと首を回してその鋭い瞳で私を射抜いた。
凛ちゃんの胸倉を解放した手が、今度は私の肩を捕える。
先程よりも強い握力に痛みを訴えたくても、そんな隙さえ与えない芳賀さんの重圧に奥歯を噛み締めた。


「アンタもアンタよ!いつまで経ってもウジウジしちゃって、ウジ虫じゃないんだから!」