(だって、ファルマンが加護を与えるのは主人公で。子どもの頃、森に迷い込んだ主人公を見初めて加護を与えて……私が愛し子と呼ばれるはずがないのに!)
「その顔、正しく愛し子について把握しているのかな。何やら否定したがっているようにも見えるけど、こればっかりは俺の言葉でも嘘偽りなく本物さ。君は俺の愛し子で、その気なれば精霊の声だって聞こえるんじゃない?」
「嘘、だって……いつ!?」
いつ自分を愛し子に選んだというのか。
「祝福を贈ったのは君の六歳の誕生日だったかな」
考えられるファルマンとの接触なんて彼に助けられた時だけだ。
「まさか、あの時!?」
「そ、あの時。あの日君は騒動の中心にいたよね」
前世を思い出し、攻略対象に追い詰められた悪夢の誕生日だ。イリーナは青ざめるが、ファルマンはうっとりとした眼差しで語る。
「そこで俺は閃いた。この子を愛し子にしたら俺の人生楽しくなるんじゃないかってね。ほら俺、せっかくの誕生日に手ぶらだったし? プレゼントに丁度良いかなって」
ファルマンはイリーナが気を失ったすきに加護を与えたと言うが、最悪の誕生日プレゼントだ。アレンの髪飾り以上に返品してやりたい。
「なのに愛し子ちゃんが学園に来なくて俺、退屈でさ。でもまさか、愛らしい昔の姿に戻っているとは想定外だったよ。君は魔法の天才だね。とりわけその知識と才能が素晴らしい。これは百年の年月も飛び越える。まさに愛し子の所行だ!」
「私が薬を開発出来たのは努力したからです。愛し子は関係ありません」
「本当にそうだって言える?」
「何が言いたいんですか」
「だって誰にも証明出来ないし?」
「それは!」
ファルマンの言う通りだ。加護を受けたからこそ、開発に成功したのかもしれない。だとしたら破滅回避に成功したのはファルマンのおかげになってしまう。
(そんなの、ファルマンの思い通りみたいで悔しい!)
「おや? 愛し子は百年に一度、あるかないかの稀な存在だよ。嬉しくないの?」
「私はそれを望んだことなんて一度もありません。私はただ、静かに過ごせたらそれでいいの!」
「謙虚だねえ。愛し子を拒まれたのは初めてだ。ははっ……ますます気に入ったな。今からでも学園においで。君なら編入も大歓迎」
「お断りです」
「何故?」
「私は貴方の愛し子。その事実は変えられないとしても、貴方の操り人形じゃありません。たとえ外に、学園に行くことがあるとしても、それは私がいつか自分の意思で決めます」
しかしイリーナの宣言にもファルマンの笑みが途切れることはなかった。
「その顔、正しく愛し子について把握しているのかな。何やら否定したがっているようにも見えるけど、こればっかりは俺の言葉でも嘘偽りなく本物さ。君は俺の愛し子で、その気なれば精霊の声だって聞こえるんじゃない?」
「嘘、だって……いつ!?」
いつ自分を愛し子に選んだというのか。
「祝福を贈ったのは君の六歳の誕生日だったかな」
考えられるファルマンとの接触なんて彼に助けられた時だけだ。
「まさか、あの時!?」
「そ、あの時。あの日君は騒動の中心にいたよね」
前世を思い出し、攻略対象に追い詰められた悪夢の誕生日だ。イリーナは青ざめるが、ファルマンはうっとりとした眼差しで語る。
「そこで俺は閃いた。この子を愛し子にしたら俺の人生楽しくなるんじゃないかってね。ほら俺、せっかくの誕生日に手ぶらだったし? プレゼントに丁度良いかなって」
ファルマンはイリーナが気を失ったすきに加護を与えたと言うが、最悪の誕生日プレゼントだ。アレンの髪飾り以上に返品してやりたい。
「なのに愛し子ちゃんが学園に来なくて俺、退屈でさ。でもまさか、愛らしい昔の姿に戻っているとは想定外だったよ。君は魔法の天才だね。とりわけその知識と才能が素晴らしい。これは百年の年月も飛び越える。まさに愛し子の所行だ!」
「私が薬を開発出来たのは努力したからです。愛し子は関係ありません」
「本当にそうだって言える?」
「何が言いたいんですか」
「だって誰にも証明出来ないし?」
「それは!」
ファルマンの言う通りだ。加護を受けたからこそ、開発に成功したのかもしれない。だとしたら破滅回避に成功したのはファルマンのおかげになってしまう。
(そんなの、ファルマンの思い通りみたいで悔しい!)
「おや? 愛し子は百年に一度、あるかないかの稀な存在だよ。嬉しくないの?」
「私はそれを望んだことなんて一度もありません。私はただ、静かに過ごせたらそれでいいの!」
「謙虚だねえ。愛し子を拒まれたのは初めてだ。ははっ……ますます気に入ったな。今からでも学園においで。君なら編入も大歓迎」
「お断りです」
「何故?」
「私は貴方の愛し子。その事実は変えられないとしても、貴方の操り人形じゃありません。たとえ外に、学園に行くことがあるとしても、それは私がいつか自分の意思で決めます」
しかしイリーナの宣言にもファルマンの笑みが途切れることはなかった。