イリーナはこれまで悪役令嬢不在の学園について知ろうとすることはなかった。入学予定のない自分には関係ないことだ。触れることさえ避けていた。
しかし今日、主人公の登場によってイリーナの平穏は脅かされた。おそらくライラはイリーナに対して何か企みを抱いている。イリーナは帰宅した兄にそれとなく学園の様子を訊いてみることにした。
「兄様、学園の様子を教えて下さい」
無邪気に問いかければ、自分が通うはずだった学園に興味があると思われた。
「本来お前も通うはずだったからな。学園の様子が気になるのも当然だろう。なんでも俺に訊くといい」
「学園で困っていることはありますか?」
「なんなんだ? その質問は。学園では多くのことが学べて楽しいぞ。授業にもやりがいがあるし、先生方もみな尊敬出来る。アレンや友人たちと競い合うことで成長もするし、お前も早く通えるようになるといいな」
そう言ってイリーナの頭を撫でてきた。なんて模範的な解答だろう。しかしイリーナが知りたい情報ではなかった。
「ジークにも会ったぞ」
「ジークに!? 元気でしたか?」
「今のお前と同じことを言っていた」
懐かしい名前につい反応してしまったが、知りたいのはそれでもない。
「何か変わったことはありませんか?」
「変わったこと?」
「おかしなこととか、私のこと、誰かに訊かれませんでしたか?」
「そういえば、妙にしつこくお前のことを訊かれたことがある。最初に話しかけられたのは新入生の入学日で、それからもしつこくてな。確か名をライラと言ったか」
存在しないイリーナの手がかりはなんといっても兄オニキスだ。
「お前の友達だったのか?」
「いいえ。知らない子です。兄様は、なんて答えたんですか?」
「心配するな。お前は身体が弱くて学園には通えないと俺がしっかり伝えておいたぞ」
「そのライラという子は納得してくれましたか?」
「納得はしていないようだが、そう答える他ないだろう。俺は騙されていると言われたが、彼女を騙しているのはこちらの方だ。あまり強くは言えなかったよ」
「そうですか……」
「それよりもだ! お前の方こそ何もなかったのか!? 不審者に攫われそうになったと聞いたぞ。お前はその、可愛いからな。敷地内だからといって気を抜くなよ」
イリーナは頷くが、その不審者もライラである。彼女のことが気になって仕方がない。
しかし今日、主人公の登場によってイリーナの平穏は脅かされた。おそらくライラはイリーナに対して何か企みを抱いている。イリーナは帰宅した兄にそれとなく学園の様子を訊いてみることにした。
「兄様、学園の様子を教えて下さい」
無邪気に問いかければ、自分が通うはずだった学園に興味があると思われた。
「本来お前も通うはずだったからな。学園の様子が気になるのも当然だろう。なんでも俺に訊くといい」
「学園で困っていることはありますか?」
「なんなんだ? その質問は。学園では多くのことが学べて楽しいぞ。授業にもやりがいがあるし、先生方もみな尊敬出来る。アレンや友人たちと競い合うことで成長もするし、お前も早く通えるようになるといいな」
そう言ってイリーナの頭を撫でてきた。なんて模範的な解答だろう。しかしイリーナが知りたい情報ではなかった。
「ジークにも会ったぞ」
「ジークに!? 元気でしたか?」
「今のお前と同じことを言っていた」
懐かしい名前につい反応してしまったが、知りたいのはそれでもない。
「何か変わったことはありませんか?」
「変わったこと?」
「おかしなこととか、私のこと、誰かに訊かれませんでしたか?」
「そういえば、妙にしつこくお前のことを訊かれたことがある。最初に話しかけられたのは新入生の入学日で、それからもしつこくてな。確か名をライラと言ったか」
存在しないイリーナの手がかりはなんといっても兄オニキスだ。
「お前の友達だったのか?」
「いいえ。知らない子です。兄様は、なんて答えたんですか?」
「心配するな。お前は身体が弱くて学園には通えないと俺がしっかり伝えておいたぞ」
「そのライラという子は納得してくれましたか?」
「納得はしていないようだが、そう答える他ないだろう。俺は騙されていると言われたが、彼女を騙しているのはこちらの方だ。あまり強くは言えなかったよ」
「そうですか……」
「それよりもだ! お前の方こそ何もなかったのか!? 不審者に攫われそうになったと聞いたぞ。お前はその、可愛いからな。敷地内だからといって気を抜くなよ」
イリーナは頷くが、その不審者もライラである。彼女のことが気になって仕方がない。