「旦那さんがいたなんて聞いてなかったですし、創さんの一方的な片想いだったってことですよね。なーんだ!」

「おいっ。」

 満面の笑みを浮かべ、創くんの声なんて耳にも入っていない。

「これで、瀬川さん愛は復活です!」

 都合のいい胡桃ちゃんの性格。らしいと言えば、らしいのだけれど、その軽さには呆気に取られていた。


 私はそれから、胡桃ちゃんからのしつこい追求を受け、根掘り葉掘り話を聞かれた。

 すでに1度話を聞いていた創くんは、ひたすら退屈そうで、好き勝手に注文しながら一人食べ続ける。バインダーにスルスルと挟まっていくレシートを横目に気にしながら、興味津々の胡桃ちゃんに捕まり、仕方なく全てを話した。

 その話は、つい最近創くんや双葉に説明したばかりのこと。3人目となれば、だんだんと慣れてくるものだった。


「あの.....。」

 一通り話し終えると、遠慮がちにそう声を出した胡桃ちゃん。

 何やら話しづらそうにモジモジしながら俯いているのを見て、私はそっと箸を止めた。

「いや、そのー、もしかしたら違うかもしれないんですけどー。」

「いいよ?なに?」

 すると、彼女は苦笑いを浮かべながらこう言った。


「そのストーカーの人。胡桃、知ってるかもしれません。」

 それは、想像もしていなかった思わぬ発言だった。