「バイト後の焼肉って最高ー!」

「現金なやつだな。」


 向かい側に並んで座る胡桃ちゃんと創くん。

 遠慮なくお肉を頬張るこの光景は、前にも見たことがあった。創くんを昼間から焼肉に連れてきた時と同じ。

 同じ店の同じ光景。デジャヴを感じた。


「えー。だって、人の恋愛話聞くの好きだし。(仮)の旦那とか、気になりますもーん。」

「ほら、創くんが変なこと言うからだよ?」

 頬杖をついて眺めながら、冗談混じりに口を出す。

 そんな中、止まらず食べ続ける胡桃ちゃんがあまりにも幸せそうで、こちらまで幸せな気分になった。

 その時ばかりは、威勢の良い彼女もなんだか可愛く思えた。


「いやいや!瀬川さんのこと嫌ってたのに、この展開は予想してませんって。」

 しかし、そこへデリカシーなくはっきりと言う創くんの言葉が入り込む。地味に傷つき、私は届いたばかりのビールを一気にぐびっと飲み干した。


「ん?嫌ってるって誰が?」

 すると、口いっぱいにお肉を含み、きょとんとした顔をあげる胡桃ちゃん。思わず、私は創くんと目を見合わせた。

「誰って、お前が。」

「え?」

 平然と言う創くんの言葉を聞いた瞬間、もごもごと動かしていた口を押さえ、驚いたように目を丸くする彼女。