初めて――。

 話を聞いていたら引っかかり、慌てて言葉を遮っていた。


「えっと、胡桃ちゃんが私のことつけてたのって、1週間くらい前からだよね?」

 私が感じていた視線は、しばらく前から続いていた。創くんが家まで送ってくれるようになったのも、そんな視線を感じていたから。

 けれど、もし本当に初めてだとしたら――。

 キョトンとした顔の彼女を見ていたら、サーッと血の気が引く思いだった。


「え、待ってください!つけてたって、ストーカーみたいなこと?そんなの今日が初めてですよっ。」

「じゃあ、朝、家から店までつけてきたり.....。」

「そんなこと、するわけないじゃないですか!むしろ、瀬川さんがどこ住んでるかも知らないし。胡桃だってバイトなくたって、大学行ってるんですから!そんな暇じゃないです!」


 一瞬、正体が分かったと安堵したのも束の間、話が食い違う。ゾッと寒気がした。

 それと同時に、胡桃ちゃんの言い分には納得し、ハッとさせられる。

「そっか。」

「何疑われてるか知らないですけど、変な罪押し付けないでください。」

 なぜか立場が逆転。調子のいい彼女にそう責められ、なんだか納得いかない状況になった。


 一方で、めんどくさそうに壁に寄りかかりながら、爪と睨めっこする創くん。まるで他人事の彼をチラッと見て、私は口を尖らせた。


「でも、胡桃ちゃんだってねえ。」

「なんですか?」

 私はせめてもの反撃に、ハッキリと言わせてもらう。