【プロローグ】


赤く焼けた青い海
夕陽が世界にサヨナラを告げ月が徐々に姿を表す。
辺りに響く波の音、5時のチャイムに合わせて急いで帰る子供たち。
そんな風景を横目に4人で話をしている。

そんな当たり前のようで特別な時間が好きだった。







「もう5年も経つんだね」

ハルが徐ろにそう呟いたのを皮切りに会話が始まる、昔から何も変わらない関係性。

「そりゃ俺たちも大人になるよな」

蓮がそんなハルを愛おしそうに見つめながら
しみじみと言う

「結衣ちゃんそろそろ行くよ!」

「え?」

「え?じゃなくて!エフェメラルハウス!」


ハルに名前を呼ばれ足早に車に駆け込み
私たちは少しの間4人で過ごした東京に向かう



"エフェメラルハウス"


「はーーい点呼とりまーーす!」

運転席に座った蓮が私とハルに声をかける

「いや3人全員いるから!!」

ハルと蓮のやり取りに笑顔が零れる私

みんなが今でも笑顔でいれてる

"4人の願い"

いつまでも続くよね








「お前にまた会いたいよ」

心で言った言葉は宙を舞うことも無く消えていった。



車に乗り込む3人


地元から東京までかなりの時間がかかるこの道のりに大事な昔からの私たちの思い出を取り出す。


何年も前のスマホだ。



みんな全然違う音楽の趣味
それを1つにまとめただいぶ古いスマホを車に繋いでプレイボタンを押す

昔もこうやってみんなで歌ったなあ………

知らず知らずに音量を下げ会話に夢中になりながらも皆しっかり聞こえてたはずだ




私たち4人だけが知る4人だけの歌を。



「やっと着いたね!運転お疲れ!」

車から降り長時間の運転で少し足元のおぼつかない蓮を支えながらハルがかけた言葉

続いて車を降りた私に2人が駆け寄ってくる

「つかれたー!俺、今日が来るの楽しみにしてたんだよ!」

「私ずっと結衣に会えるの楽しみにしてたの!!」

楽しそうにこちらを見つめるハルと蓮

「私も楽しみにしてた」

楽しいはずなのに2人を見てると
どこか寂しいような悲しい気持ちになった

いや違う、私だけじゃない

きっと2人もそうだ

「久しぶりだなぁエフェメラルハウス」

「あの時と全然変わってないね」

「全くだよ、おれらはとっくに変わっちゃったっていうのにさ」

部屋に入り途中買ってきたお酒を広げる
ハルがご飯の用意を始め
蓮はすぐに部屋の掃除を始める

そして私は

"あの部屋"に向かう

「ただいま………瀬名………」

置いてある写真とギターケースに言葉をかけ
そこにラム酒を置く。




私たちは今でも4人だ




10年前から変わらずに。