こんなことなら。
こんなことになるなら。
「────兄妹じゃなければ良かったのに……」
泣くな、泣くな私。
私が泣けば、お兄ちゃんが泣けなくなる。
泣くな、泣くな私。
私に涙を流す権利なんてないんだから。
「始まりが兄妹じゃなければ、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんでなければ良かったのに……っ」
それがお兄ちゃんやお父さん、お母さんたちと過ごした日々を否定する言葉だと言うのは分かっている。
けれど今は、そう思わずに入れなかった。
もしも私たちが赤の他人だったら。
生田の家の子供にならなければ。
お兄ちゃんの妹じゃない形で出会っていれば。
お兄ちゃんがこんなにも苦しい道を歩むことなんてなかった。
堂々と手を繋いで外を歩いて、キスして、幸せな恋ができたはずなのに。