一通り笑ってから、アリギュラは晴れやかな顔で娘を見た。頭の両側に縦ドリルがぶら下がっているのを見たときは妙な奴だと思ったが、なかなかどうして、話のわかる娘だ。おかげで、ここ数日間メリフェトスにため込んでいた鬱憤が、すっかり晴れた心地がする。
紅い瞳をキラキラと輝かせて、アリギュラは素直に礼を言った。
「おぬしに話を聞いてもらえてよかった。わらわが間違っていたのではないと、安心したぞ」
「お役に立ててよかったですわ。強引な婚約者を持つと大変ですのね。正直、そういった殿方に憧れる気持ちもあるのですけど、お話を聞いて考え直してしまいましたわ」
頬に手を当て、悩ましげに娘が溜息をつく。どうやら娘の中で、メリフェトスのことは『強引な婚約者』として変換されたらしい。
ここで下手に否定しては話がややこしくなる。何より、「恋人でも婚約者でもない男とキスをした」と知られれば、せっかくできた同志に引かれてしまうかもしれない。だからアリギュラは、あいまいに笑ってごまかした。
「ま、まあな。さ、次はおぬしの番じゃ! 一体何に、おぬしは腹を立てているのだ?」