「まあ。まあ、まあ、まあ!!」
ローナ聖堂の一角、中庭の中央にある噴水の影にて。
銀髪縦ロールの娘は、アリギュラの話を聞いて悲鳴を上げた。両手で顔を覆い、指の隙間からこちらを窺う娘に、アリギュラは憤慨したまま先を続けた。
「ありえぬだろう!? あやつめ、嫌がるわらわの唇を何度も何度も奪いおるのだぞ!?」
「は、破廉恥な! とっても破廉恥ですわ、その殿方は!」
「そうじゃろう、そうじゃろう。おまけに、わらわが怒り暴れると、奴がなんというかわかるか?」
「いえ。その殿方は、いったいなんと……?」
「〝諦めてください。これが貴女の、お役目ならば〟」
メリフェトスを真似て声を低くしてみせれば、娘は唖然と息を呑む。そして、顔を真っ赤に茹で上がらせたまま、縦ドリルをぶんぶんと揺らして首を振った。