さすがは長年連れ添ってきた相棒だ。逃げ惑うアリギュラを、毎度毎度、メリフェトスは的確に追い詰める。時に、壁際に閉じ込めて。時に、腕に抱えて逃げ道を塞いで。顎に手をかけ、美しい男は無慈悲に囁く。

 聖女の力、借り受けいたします、と。

 唇に触れる生々しい感触が蘇り、アリギュラは大声で叫んで走り回りたくなった。

 穴があったら入りたい。否。むしろ自分でせっせと穴を掘って、そのまま地中深くに閉じこもってしまいたい。

 本当の、本当に。まったくもって、どうして。

「どうして、わらわがこんな目に会うのじゃー―――!!」

「どうして、私がこんな目に会うのですわ――――!!」