……状況は、互角。否。アリギュラの身体に残る魔力はあとわずかだ。だからこれは、最後の悪あがき。彼女が勝利を収める可能性は、まったくない。

 だというのに、アリギュラは笑っていた。血のような瞳の瞳孔を開き、膨大な力の渦の中黒髪をなびかせて、ただただ狂暴に笑っていた。その苛烈な最期に、メリフェトスの目からは自然と一粒の滴が滑り落ちた。

 ああ、なんと。なんと我が君は、美しいのだろう。

 直後、アリギュラの魔力が尽きた。影が光に呑まれ、何もかもを白く染め上げる。光の爆発の中、アリギュラは笑顔のまま、メリフェトスも微笑みを浮かべたまま、塵となり一瞬で消し跳ぶ。

 そうやって何もかもが無に帰し、浄化された後。勇者は聖剣を振り上げ、雲が晴れた青空に、生き残った者たちが歓喜の声が響き渡る。

 こうして、長きにわたる戦争は終わった。

 長く人々を苦しめ、恐怖の底に突き落とした魔王アリギュラは死んだのだ!