なんでも、アリギュラより借り受けた聖女の力で、メリフェトスが兵たちの傷を一瞬で癒したのが原因らしい。聖女の癒しの力は、どんな薬や祈りよりも強力だ。そんな噂が瞬時に広がり、病や怪我に苦しむひとびとの足を聖堂へと向かわせたのだ。
そのせいでアリギュラは、毎日、何度も何度も何度も、メリフェトスに聖女の力を渡すはめになっている。
(おのれ、メリフェトスめ……! 毎日、ちゅっこら、ちゅっこら、ちゅっこらと……! こんなに何度も口付けをさせられるなんて、わらわは聞いておらぬぞ!?)
連日のことを思い出し、アリギュラは頬を茹で上がらせる。
効果抜群な代わりに、癒し魔法は燃費が悪いらしい。アリギュラに代わって人間どもの傷を癒してまわっているメリフェトスは、しょっちゅう聖女の力の補給を必要とした。
〝や、やめろ! 聖女の力なら、さっき貸し与えたであろう!?〟
〝足りないから迫っているのですよ、アリギュラ様〟