――さて。なぜ、かつて異世界を震撼させた魔族の王が、ここまで人間に見つかることを恐れているのか。それはひとえに、ここ『まほキス』の世界における、聖女の役割のせいである。
〝いいですか、我が君〟
アーク・ゴルドから一緒に召喚されてきたアリギュラの腹心の部下、メリフェトスに言われた言葉が、耳に蘇る。
〝我が君の魂を確実にこの世界に馴染ませるため、我々はこの世界で、『まほキス』のエンディングを目指さなければなりません。そのためにも、聖女の役目を果たすのは絶対です。人間どもに助けを求められたら、聖女として手を貸してやらねばならないのですよ!〟
そのように説得され、例の方法でメリフェトスに聖女の力を貸し与えたのは6日前。
それからというものの、ローナ教会には連日、大勢に人間どもが押し寄せてきている。