アリギュラの部屋の扉が、控えめにノックされる。そちらを見やったメリフェトスに、つられてアリギュラも首を傾げた。

 顔を覗かせたのは、伝令役の三級神官だった。

「聖女様……。お休みのところ申し訳ありません。実は、先程の襲撃にて負傷したものが数名いまして」

 ふつふつと、嫌な予感がわきおこる。

 ぎぎぎぎと音がしそうなほどぎこちなく振り返れば、メリフェトスに力強く頷かれた。

「もちろんです。民を癒すのは聖女のお役目。アリギュラ様の()()の出番です」

「ひっ!」

 するりと立ち上がったメリフェトスが、足早にアリギュラに近づく。逃げ出す間も無く追い詰められたアリギュラは、がしりと両肩に手を置かれて飛び上がった。