なんと答えればいいのか言葉が見つからず、アリギュラは間抜けな声を漏らす。

 ――メリフェトスの言うこともわかる。

 どうあがいても、聖女として誰かひとりパートナーに据えなくてはならない。本当にそうだとしたら、勝手知ったる相棒であるメリフェトスを選ぶのが最適解だ。表向きは聖女と攻略対象者として過ごし、裏ではこれまで通り魔王と臣下として共闘すればいい。

 だが。
 
(こやつ、これっぽっちも下心なくても、あんなことができるのか……)

 ぷくりと頬を膨らませ、アリギュラは不貞腐れた。随分と()()()の違いを見せつけてくれる。自分なんか、ファーストキスだったのに。

 むすりと黙り込んだ主人に、メリフェトスは腕を組んで嘆息した。

「じきに我が君も、私の機転に感謝することになりますよ。……と。さっそく始まったようですね」