そんなドタバタ騒動が、幾度となく繰り返された後。




「お目通り叶いまして、ありがたき幸せにございます」

 白い修道服のあちこちから、ぷすぷすと煙を上がる。焼け焦げだらけのぼろぼろの姿で、メリフェトスは床に手をつき、頭を垂れた。

 腹心の部下が目の前で地に頭をつける傍ら、アリギュラは頭からすっぽり毛布にくるまっている。そのまま彼女は、ベッドの上でふいとそっぽを向いた。

「何を言われても許さぬ。わらわ、初めてであったのに」

「……ていうか、本当の本当に、一度も経験なかったのですか? あの色気で? あの貫禄で? 150年以上生きてきて、一度もキスしたことないというのはさすがに……」