アリギュラが崩れた体制を直しきれないまま、カイバーンは聖剣を掲げる。その切先に天使の力を込め、勇者は叫んだ。

「魔王アリギュラ!! これで最期だ!!」

「アリギュラ様ぁぁぁあああああ!!!!」

 考えるより先に、メリフェトスは地面を蹴って飛翔する。二人に肉薄しつつ、最後の魔力を振り絞って防御魔法を展開する。敬愛する主を守る。その一心で、メリフェトスはアリギュラに手を伸ばした。

「バカ者……!!」

 下がっていろ、と。おそらくはそう言ったかったのだろう。アリギュラの紅い瞳が、一瞬だけメリフェトスに向けられる。けれども直後、膨大な天使の力をまとった必殺の技が、勇者によって放たれた。

「これで最後だあぁぁぁぁぁああ!!!!」

 光の傍流がアリギュラとメリフェトスに襲い掛かる。そのすさまじい勢いに、メリフェトスの作った魔法壁が軋み、一拍後に派手に音を立てて割れた。