妙にくどく、メリフェトスは念を押す。だが、愛刀を取り戻してご機嫌なアリギュラは、部下の些細な変化に気が付かない。
ぶんぶんと嬉しそうに魔剣をふるうアリギュラを、メリフェトスはじっと見つめる。ややあって、彼はにこりと余所行きの笑みを浮かべた。
「では、我が君。城にできた傷は、私が治してよろしゅうございますね」
「ああ、頼んだ、頼んだ。くるしゅうないぞ、よしなにやっておけ」
話半分に聞き流し、アリギュラはディルファングを愛でる。この握り心地、この重厚感ある振り心地。やはり、自分の相棒となる剣はこれしかない。異界の地で、こうして再び共に戦うことができようとは。自分はなんと幸せ者なのだろう。
――そんなことばかり考えていたから、まったく気が付かなかった。
メリフェトスにぐいと肩を引き寄せられ、反対側の肩が固い胸板にあたる。一体、何事か。驚いたアリギュラは、なんとなしに隣を見やる。