「ほんの小手調べのつもりだったが、異界の魔獣はこの程度か。仕方があるまい。生まれは違えど同じ魔族の長として、わらわ直々におぬしらを鍛えなおしてやるわ!」

 聖女が口にしたことのほとんどは、ジークの耳に届かなかった。けれども、禍々しく輝く愛刀を手に、嬉々として聖女がグズグリの群れに突っ込んでいくのは鮮明に見えた。

 その凛々しく神々しい姿に、ジークの胸はトゥンクと跳ねた。

(どうしたというのだ、この胸の高鳴りは……っ)

 ――ジークだけではない。鈍色の剣を鈍器のように扱い、次々にグズグリを海に叩き落す聖女の姿は、まさに戦の女神。小さな体からほとばしるその輝きに、ほかの攻略対象者たちも目を奪われていた。