だが、当の聖女は落ちた剣を一瞥すらしない。
代わりに彼女は、手を高々と掲げて叫んだ。
「顕現せよ!! ディルファング!!」
「っ!?!?」
ジークは息をのみ、続いて吹き荒れた魔力風に顔を覆った。
光の剣が現れた時とは比べ物にならないほど、膨大な魔力の収束を感じる。腹の底が震えるような感覚があってから、ソレは現れた。
聖女が握るのは、鈍色に輝く剣。刀身は光の剣よりも長い。だというのに、それを手にする聖女は堂々としており、少しも不釣り合いなところがない。それどころか。
(なんだ、この存在感は……)
汗が一筋、額から滑り落ちる。