ゆっくりと右手を掲げ、何やら呪文を呟く。すると、聖女の周りに光の玉が浮かび、急速に彼女の右手の周りに収束した。
パンッと光がはじけたとき、ほかの兵の口からも感嘆の声が漏れる。聖女の手には、伝説に聞く聖剣『光の剣』が握られていたからだ。
「ひ、光の剣だ!」
「神託は本当だったんだ!」
神々しく光る剣に、兵たちも手を取り合って喜ぶ。それは、ジークにしても同じだった。
聖教会に降りた女神クレイトスからの神託によれば、光の剣こそ、魔王サタンを葬る唯一の武器だという。その武器は聖女によってもたらされ、彼女による祝福――聖女のキスを受けた者だけが、その剣を扱うことができるのだと。
「聖女様! 私に光の剣をお与えください!!」
ジークは思わず上空に向かって叫んでいた。
王族に生まれた者の責務として、兵の先頭に立ち、民を守らなくてはならない。これまでジークを突き動かしてきたのは、そんな王族としての矜持だった。