エルノア国の王都、アルデール。

 その高台に位置する聖教会のローナ聖堂のテラスに、聖職者たちがずらりと並ぶ。彼らは鐘の音に合わせて目を閉じると、一斉に詠唱を始めた。

 途端、聖堂の上空を起点に、魔法の防御壁がベールのように空を覆いつくしていく。それはアルデールの町全体を呑みこみ、外からの侵略者への盾となった。

 その防御壁の外で、異世界の魔王アリギュラは、両手を組んで不敵に笑っていた。

「配置に付け!!」

「弓兵は弓をつがえろ! 合図を待て!!」

「投石機はまだか!?」

 アルデール城の西壁では、あわただしく兵たちが走り回る。バリアの向こうに浮かぶ魔獣の軍団との、戦闘に備えているのだ。

 その中を、エルノア国第一王子、ジークが駆ける。魔獣との戦闘に備え、隣接するローナ聖堂から急ぎ城へと戻ったのだ。