アリギュラは思わず足を止めた。主人を踏まないようにつんのめって踏みとどまるメリフェトスを振り返り、きらきらした瞳で見上げる。

「魔王!? この世界にも、魔王がいるのか?」

「はい、アリギュラ様。ええ、私も、本来であれば菓子折りのひとつでも持ってご挨拶に伺いたいところではありますが……」

「菓子などどうでもいいわ! ならば、都の外壁に押し寄せる魔獣というのは……」

「お察しの通りにございます。奴らは魔王軍配下の魔獣たちです。魔王サタンの望みは、人間どもを滅ぼすこと。『まほキス』においては、魔王サタンをパートナーと共に打ち破るのが、ストーリークリアの必達条件です」

「それを早く言わんか!!」

 叫んだアリギュラに、行き交う人々も足を止めた。アリギュラが後ろにいないことに気づいたジークも、戻ってきて困惑したように眉根を寄せる。