(む、無理じゃ無理じゃ無理じゃ!! 連中にキッスをしようものなら、照れ隠しに首を刎ねてしまう……!)
生娘のように――実際、まごうことなき生娘である――恥じらう、世界を震撼させた破滅の王、魔王アリギュラ。
そんな彼女に、なぜかメリフェトスが逡巡するように瞳を泳がせる。それからメリフェトスは、こほんと小さく咳払いをした。
「……で、あるからして。アリギュラ様に、ひとつご提案がございます。これから申し上げることは、決して変な意味で捉えてほしくは無いのですが……」
「おい。なんだか外が、騒がしくはないか」
もごもごと続けるメリフェトスを制して、アリギュラは耳を澄ます。扉の奥で、ドタバタと何人もの人間が走り回る音がする。かと思えば、扉が力強くノックされる。
アリギュラが答えるより先に、がちゃりと勢いよく扉が開く。顔を見せたのは、攻略対象のひとりが判明したこの国の王子、ジークであった。