人形のように整った顔を沸騰させたまま、アリギュラはぷんすかと怒った。
「な、なななんて破廉恥なげえむなのだ、『まほキス』とやらは! 『おとゅめげえむ』とは皆そうなのか!? そんなものを女神は好むのか!?」
「破廉恥か破廉恥ではないかでいえば、『まほキス』はまだまだ序の口。なにせ全年齢対象ですから。だとしても、我が君にとって刺激が強すぎる事実は変わりません。なぜなら我が君は、異性と手を繋ぐことすら精一杯……」
「じゃかあしいわ!!!!」
ふうふうと荒く息を吐きつつ、アリギュラはぱっと両手で顔を覆う。
とはいえ、アリギュラに恋愛耐性がないのは変えようのない事実。150歳を超えているアリギュラだが、そもそも悪魔的年齢で考えればまたまだ若者だ。
加えてアリギュラは、青春全部を魔剣を手に戦場を駆けるのに費やした。そのせいで、恋人はおろか浮ついた話もまっまくもって無し。メリフェトスを初めとする四天王にさえ、「美貌の無駄遣い」「中身の伴わない色気」「逆にそそる」と散々軽口を叩かれる始末だったのだ。