「かくなる上は、我が君! その類まれなる美貌と知略をもってして、『まほキス』のヒロインとしてのお役目、全うくださいませ!」
「――――イヤじゃ」
ぺい、と手を引き剥がし、アリギュラは憮然と答えた。「な、なにゆえ……!?」と衝撃を受けるメリフェトスに、アリギュラは可憐な顔を思い切りしかめた。
「いや、おぬしが何をいっておるのだ? おぬし、さっき『おとゅめげえむ』の主題は恋愛だとはっきり言ったではないか。わらわ、魔王ぞ? 魔族の長ぞ? なにが悲しくて、人間の男と恋愛ごっこなどせねばならぬのだ」
「仰ることはもっともです! もっともですが、我が君……」
「だいたい、異界の人間などどうでもいいわ。滅ぼうがなんだろうが、好きにすればいい。わらわはやる気が出ぬ。徹底的に出ぬ」
「それが、滅ぼしてはならぬのです、魔王様!!」