なにせあの時、アリギュラとカイバーンは命を削る激戦を繰り広げていた。そこに満ちていた魔力量は、半端なものではなかっただろう。異界から飛ばされた魔術が、ふらふらと引き寄せられてしまったのも無理はない。

 そして悔しいが、カイバーンとアリギュラとでは、アリギュラの方が弱っていた。だから異界の魔術に引きずられ、召喚などされてしまった。メリフェトスは言うなれば巻き添え。アリギュラのように直にこの世界に飛ばされるのではなく、一度女神のもとに飛ばされたのはそのために違いない。

 頭の中を必死にフル回転させて、アリギュラは考える。つまり、この世界は物語の再現で、大筋が決まっていて、世界の主人公は聖女で……?

「待て待て待て。つまり、わらわは主人公なのか? 世界の中心なのか?」

「その通りにございます、我が君! アリギュラ様は『まほキス』のヒロインとして、この世界に召喚されたのでございます!」

 メリフェトスがアリギュラの手を取る。しっかと両手で握りしめてから、魔王軍一の知将は恭しく進言した。