けれどもメリフェトス(仮)は、少しも気分を害しはしなかった。それどころか、かっと目を見開いて、切々と訴え始めた。
「では我が君、こちらでいかがでしょう。私が我が君と巡り合った記念すべき日、我が君は私を足蹴にし、その尊い御足で私をお踏みになられましたね。後頭部にめり込む甘美な疼きも、ゾクゾクするような赤い瞳の激しさも、私は鮮明に覚えております!」
「んな!? お、おぬし! なんて記憶を引っ張り出すんだ!?」
「これだけではありません。我が君が猫舌で、熱いスープをこっそりふぅふぅされていることも。本当は丸っこくて可愛いものが大好きなのに、小動物に逃げらればかりで涙目になっていることも。昔は雷が苦手で、『覇王の鉄槌』を落とす時はちょっぴり緊張されていたことも、私はすべて……」
「や、やめろ!! これ以上、我が軍の機密情報を垂れ流すでない!!」