アリギュラは次第に鼓動が早くなっていくのを感じた。否、早いなんてもんじゃない。今にも緊張で、口から心臓が飛び出してしまいそうだ。

 けれどもそれは、相手も同じらしい。見たこともない緊張に染まった顔で、メリフェトスはこちらを見下ろしている。

 その眼差しも、表情も、彼という存在のすべても。なんて愛おしいんだろうと。柄にもなく、アリギュラはそんなことを思った。

 小さく吐息をこぼしてから、メリフェトスを意を決したように、薄い唇を開いた。